⽶国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム2023において発表 難治性胆道がん患者に対するL-タイプアミノ酸トランスポーター1(LAT1)阻害剤 ナンブランラト(開発コード:JPH203)の国内第II相試験で主要評価項⽬を達成

2023年1月23日
ジェイファーマ株式会社

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ジェイファーマ株式会社(本社:神奈川県横浜市鶴見区、代表取締役社長:吉武益広)は、L-タイプアミノ酸トランスポーター1(LAT1)を標的として当社が独自に創製した新規の低分子化合物である「ナンブランラト(開発コード:JPH203)」の進行性胆道がんを対象とした国内第II相試験(以下、本試験)の成績において、単剤で有用な臨床効果を示すことが明らかになったことをお知らせします。
本試験の結果は、2023年1月20日(金)(米国太平洋標準時)に米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(Gastrointestinal Cancers Symposium : ASCO GI 2023)において口頭発表されました。

臨床腫瘍学会米国消化器がんシンポジウム
Rapid Abstract Session
神奈川県立がんセンター総長 古瀬純司医師による口頭発表
開催地:サンフランシスコ
現地時間:1月20日 午前7時10分-7時15分

ASCO広報のインタビューに対して古瀬医師は「LAT1阻害剤のナンブランラトは、前治療歴のある進行性難治性胆道がん患者に対して、統計学的に有意な無増悪生存期間と良好な安全性プロファイルを示しました。胆道がんに対する2次治療以降の化学療法は非常に限られています。ナンブランラトは、標準治療に抵抗性を示す胆道がん患者の生存率向上に貢献することが期待されます。」と答えています。

1.本試験の概要
前治療歴のある進行性の難治性胆道がん患者に対するナンブランラト(L-タイプアミノ酸トランスポーター1(LAT1)阻害剤)の無作為化、二重盲検、プラセボ対照の第Ⅱ相試験です。国内14施設が参加し、211名の患者から同意を得て、薬剤代謝酵素(NAT2)の多型をもとに患者を層別し、106名の患者(ナンブランラト:70名、プラセボ:36名)が登録されました。LAT1は細胞が癌化すると細胞表面に多く発現し増殖に必要な必須アミノ酸を取り込むことが知られており、発現の多いがんほど悪性度が高く患者さんの予後が悪いことが報告されています。本試験は胆道がんの4つの異なるサブタイプ(肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん)の症例が登録され、83%の患者が標準的な化学療法および他の治験薬2剤以上に不耐性となった進行性の胆道がんでした。主要評価項目は、固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST 1.1)に基づき盲検下独立中央判定(BICR)によって評価された無増悪生存期間(Progression-Free Survival。以下、PFS)です。
※ 治験情報:UMIN000034080

2.本試験結果について
BICRによるナンブランラトのPFSは、プラセボ群と比較して統計学的に有意な改善(ハザード比 0.557、95%信頼区間 0.3435-0.9029、p = 0.0164)を示したことから、本試験は主要評価項目を達成しました。LAT1を特異的に阻害するナンブランラトは、複数の前治療がある進行性の難治性胆道がん患者において単剤で有用な臨床効果を示すことが明らかになりました。その効果は患者の性別、年齢、前治療歴、転移の臓器、胆道がんサブタイプにおいて一貫して確認されています。病勢コントロール率(DCR)は、胆道がんの4つの異なるサブタイプで約25%(平均= 24.6%)でしたが、プラセボでは11.4%でした。安全性の面では、薬物有害反応(副作用)はナンブランラトが41.4%、プラセボが57.1%、グレード3以上の有害事象はナンブランラトが30.0%、プラセボが22.9%でしたが、投与の中止/減量や死亡につながる事象はありませんでした。

※LAT1について
アミノ酸を輸送するアミノ酸トランスポーターはこれまでに50種類以上発見されていますが、弊社創業者の遠藤仁医師が1998年に世界に先駆け発見した細胞表面に発現するSLCトランスポーターのLAT1(遺伝子コード: SLC7A5 )は、細胞ががん化したり、急激に増殖しようとするときに細胞膜での発現が亢進し、アミノ酸を盛んに取り込むことで爆発的な細胞増殖を起こします。LAT1(SLC7A5)は近年科学的な解明が進み、LAT1の複雑な分子構造が最近報告され、薬物標的として注目を集めてきています。また、LAT1はがん細胞だけでなく、免疫細胞等の増殖が盛んな細胞での発現が確認されています。特に、関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症等に代表される自己免疫疾患においてLAT1が重要な役割を果たすことが近年多数報告されるようになりました。当社ではLAT1阻害剤の次なる標的として自己免疫疾患への応用を進めています。

※ナンブランラトについて
ナンブランラトは、当社がLAT1を標的として独自に見出した新規の低分子化合物です。当社は2015年から複数の固形癌を対象に臨床第Ⅰ相試験を行い胆道がんへの可能性を見出し、2018年から3年半の時間を費やし本試験を遂行してきました。LAT1を標的とし臨床開発を進めている世界初の化合物であり、医薬品の承認を取得すれば、ファースト・イン・クラスの新薬となります。
なお、ナンブランラトは2022年4月に米国食品医薬品局(FDA)からオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定され、臨床開発プログラムへの助言相談、臨床試験費用の一部税額控除、申請費用の免除、米国における7年間の独占販売権付与などの優遇処置を受けることができます。

※胆道がんとは
胆道がんは、胆道にできる癌の総称で、発生した部位によって、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんに分類されます。肝外胆管がんはさらに肝門部領域胆管がんと遠位胆管癌がんに分類されます。胆道がんは、病期が初期である場合は検診等の検査にて見つかることがありますが、無症状で経過することが多く、病気が進行すると、症状として黄疸、右わき腹の痛み、体重減少などを呈し、その状態となってから診断に至ることが多いがんです。国立がん研究センターのがん統計では、胆嚢・胆管がんの患者数は22,159人(2019年)と全癌種中16位です。一方で、死亡数は18,172人(2021年)、5年相対生存率(2009年~2011年地域がん登録生存率データ)は24.5%と低く、予後が極めて悪いがんです。院内がん登録全国集計(2020年)では、胆嚢・胆管がんの胆道がんの登録数18,750例のうち、診断時の年齢は65歳以上が88%、75歳以上が60%を占め、高年齢で診断されています。また、胆嚢がんにおけるTNM分類総合ステージⅣ期の割合は45.1%と非常に高く、ステージⅣ期で手術や薬物治療などの治療が施されない割合が42.4%と半数近くを占めています。胆道がんの根治的治療法は外科切除よる病巣の切除です。外科手術の適応とならない切除の困難な胆道がんは、化学療法が行われます。日本において、ゲムシタビン及びシスプラチンとの併用(GC)、ゲムシタビン及びテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)との併用治療(GS)、GC及びS-1の併用療法(GCS)が標準治療法となっています。これら標準療法(GC、GS又はGCS)に耐性になると、現状では確立された2次療法はありません。近年、本邦ではチロシンキナーゼ活性阻害薬であるペミガチニブが、「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌」を対象として、2021年3月に承認されています。免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブは化学療法との併用療法による「治癒切除不能な胆道癌」に対し2022年12月に承認されています。

【本件に関するお問合せ先】
ジェイファーマ株式会社 担当 管理部 湯沢
TEL:045-506-1155
Mail:info@j-pharma.com
PR窓口:合同会社マッシュ 担当 新野
TEL:080-3012-7306
Mail:niino@masc-mn.com