新規抗がん剤JPH203の第Ⅰ相臨床試験終了のお知らせ

2018 年 1 月 19 日
ジェイファーマ株式会社

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JPH203 の進行性固形腫瘍患者における第1 相(ヒト初回投与)臨床試験の報告を、杏林大学腫瘍内科(古瀬 純司教授)の岡野 尚弘助教が米国臨床腫瘍学会消化管癌シンポジウム(ASCO GI*、2018 年 1 月 18 日~20 日、於:サンフランシスコ)にて発表されましたので、同サイトに掲載されました要約の和訳を以下の通りご連絡します。
“ASCO GI”:American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium

背景:
癌細胞の増殖にはアミノ酸の取り込みが不可欠である。L タイプアミノ酸トランスポーター1(LAT1)は様々な癌において発現が上昇し、癌細胞増殖に必須なアミノ酸を癌細胞に供給する役割を果たしている。JPH203 は新規の選択的 LAT1 阻害剤である。本臨床試験は、JPH203 のヒト初回投与第Ⅰ相臨床試験であり、安全性、最大耐量(MTD)および推奨用量の決定を目的として実施された。同時に JPH203 の抗腫瘍効果、薬物動態及び薬力学の評価および血漿遊離アミノ酸の分析も実施した。

方法:
標準的治療に抵抗性の進行した固形腫瘍の患者に対し、12〜110 mg/m2 の用量で JPH203 を 7日間静脈内投与し、21 日間休薬する計画とした。また、このスケジュールを開始する前に JPH203の単回投与による安全性を確認した。用量制限毒性は、3 + 3 デザインを用いて、第 1 サイクル中に評価した。

結果:
2015 年 1 月から 2016 年 8 月までに 17 名の患者が登録された。1 名の患者は、腫瘍の進行の為JPH203 の単回投与後に試験を中止した。投与量は 85 mg/m2 まで段階的に増加させた。有害事象については、60 mg/m2の用量においてグレード 3 の肝機能障害が 6 名の患者のうち 1 名に出現し、85 mg/m2 では投与した最初の患者で発生した。従って、MTD は 60 mg/m2 であると判定された。
一般的な治療関連有害事象としては、ALT / AST の増加、倦怠感、悪心、高血圧およびグレード 1または 2 の発熱が見られた。
一方、胆道癌(BTC)患者で部分奏効(PR)が見られた。この患者には、JPH203 を 2 年間に渡り投与し、腫瘍が進行することなく、部分奏効(PR)を維持できた。更に、BTC 患者 5 名中 3 名及び大腸癌患者 6 名中 2 名で病勢コントロール(PR + SD)が得られた。
また、LAT1 の基質となる(LAT1 により輸送される)アミノ酸及び LAT1 基質アミノ酸を含む分枝鎖アミノ酸は、他の癌を有する患者よりも BTC 患者において高い事が示された。病勢コントロールが得られた全ての患者で、ボディマス指数(BMI)が中央値の 20.5 kg/m2 より大きい値であった。探索的分析では、LAT1 基質アミノ酸の取り込みの阻害が高い患者では、取り込みの阻害が低い患者と比較して、より長い生存期間が達成されたものと推察された。

結論:
JPH203 は十分な忍容性があり、BTC に対する効能が期待できる。BTC では進行しても血漿中のLAT1 基質アミノ酸濃度が高く維持される傾向があることから、LAT1 は進行性胆道癌の有望な治療標的となり得る可能性が示唆された。